天田城介(josukeamada.com)講義関連
2004年度 卒業演習(二福)

天田城介(AMADA Josuke)
最終更新日:2005.03.29


【講義日時】
卒業演習   水曜日後時限  113C教室(→少人数のため、概ね研究室にて行います)

【講義資料】
随時レジュメを配布しています。

【卒業演習参加メンバー】(名簿順)
元村健太、古川法聖、安尾文、小泉あゆみ、成松正憲、上田梨世(自主参加)、塚本真弓(自主参加)

【卒業論文集】
あと僅かですが、残部があります。希望の方は天田までメールをください。

【概要】
 本演習では、人口の高齢化を主要特性のひとつとする現代社会とそこで老いを生きる人々の理解を目的とする。特に本年度は、国際比較的な視点から「なぜ高齢者を介護するべきなのか?」「手厚い高齢者福祉の正当性の根拠とは何か?」「高齢化とはいかなる現象であるのか?」「個人の老いとはいったい当事者にとっていかなる意味であるのか?」等について考察していきたい。
 国際比較分析をするにあたっては、北欧(スウェーデン・デンマークほか)、西欧(イギリス・フランス・イタリア・ドイツ・スペインほか)、東欧(オーストリア・ハンガリー・ポーランドほか)、北米(アメリカ合衆国やカナダ)、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)、 東アジア(韓国・中国・台湾・シンガポールほか)、中東諸国(サウジアラビア・アラブ首長国連邦ほか)というように広範な国民国家を対象に行っていく。
 いずれにしても、自らの関心に応じて自発的な研究を期待するものであるから、明確な問題意識・研究関心を持った主体的な参加を期待したい。

 本演習では、はじめにそれぞれの問題意識・研究関心を発表してもらい、それに基づいて複数のグループ分けを行う。次いで、研究のための資料・文献の収集と解析の方法について説明した上で、各グループごとに関連する文献を講読し、レジュメを作成して発表を行う。
 一定量の文献を読み終えた後、各グループで研究テーマを設定した上で、文献研究を中心にした調査研究を実施してもらう予定である。
 最終的には、まとめた結果を報告し、全体で議論してもらう予定である。年度末にはこの調査研究の結果は(相当な分量の)ゼミ報告書として完成・報告し、更に全体で議論してもらう予定である。
 私の卒業演習は、年数回の施設見学と体験学習に加えて、参照すべき数多くの資料や文献をレヴューしてもらいますので、参加する学生にはそれぞれに明確な問題意識・研究関心を持った上での主体的なコミットメントを要求します。

●成績評定の方法:出席,演習課題への取り組みと発表内容,レポートで評定を行う。
●テキスト:特定のテキストは使用せず,適宜プリントを配布する。
●参考文献:参考文献は講義中に随時紹介する。

2004年度卒業演習(天田ゼミ)卒業論文集


高齢者医療福祉制度の正当性の根拠
――〈老い衰えゆくこと〉の国際比較分析を通じて――


●2005年3月


●刊行にあたって
 本論文集は、2004年度熊本学園大学社会福祉学部第二部社会福祉学科4年次科目である「卒業演習」(天田城介担当)を履修した学生たちが実施した研究結果をまとめたものである。本年度の卒業演習では人口の高齢化を主要特性のひとつとする現代社会とそこで老いを生きる人々の理解を目的とし、国際比較的な視点から「高齢化とはいかなる現象であるのか?」という原理的な問題性について考究した。そのため、単純に「国際比較分析」を遂行するというよりは、むしろ「なぜ高齢者を介護しなければならないのか?」「手厚い高齢者医療福祉の正当性の根拠とは何か?」「自由と平等の理論的地平から高齢者医療福祉制度はどのように制度設計されるべきであるのか?」「高齢者における自立や自己決定をめぐる言説において何が問われてきたのか?」「分配の根拠はいかにして提示することができるのか?」といった極めて難解で、時として「出口なし」に陥りがちな根源的な問題について、お互いに懸命に、冷静に考えあぐねながら一年間議論を繰り返してきたことになる。
 こうした基底的かつ根源的な思考作業は、往々にして「財政論」「制度論」に還元/回収されてしまう現在の高齢者医療福祉をめぐる言説との社会的な緊張関係を維持する上で極めて重要であり、また、それは緻密かつ大胆な理論的な視点からの考究でなければならない、と思う。本年度の卒業演習を履修した全ての学生の皆さんは、「少人数ゼミ」という恵まれた条件も手伝ったのであろう、このような知的作業をお互いに支えあい、励ましあいながら、そしてそこで築いた新しい関係性をエンジンとしながら、逞しく、懸命に、楽しみながら進めてくれた。このような「少数先鋭」の学生の皆さんと一緒に私自身もともに考えあぐね、錯綜する論理を一つずつ解きほぐしながら、考えることの意味と可能性を経験できたことは、今後の私にとっても大いなる財産になるであろう。そう確信している。
 前期(春学期)では、はじめにそれぞれの問題意識・研究関心を発表し、各テーマを通約する理論的かつ実践的な問題群に照準した先行諸研究のレビュー作業を行った上で、現在の高齢者医療福祉制度がどのような制度設計として構想されているのか、そしてそうした制度設計を構成している言説においてどのような対立・葛藤・不一致・二律背反・矛盾・不調和・争い・闘争があったのかを解読することを通じて―つまりは言説の“conflict”を「発見」する作業を通じて―現代の「争点」を描出する作業に力点をおいて進めた。
 後期(秋学期)においては、いくつかの現場を見学すると同時に、アメリカ合衆国やオーストラリア、あるいはヨーロッパ諸国における「老いの/と文化」を論考することを通じて、各自がそれぞれの研究テーマを精緻化・洗練化する作業を行い、実証的な研究を遂行した。こうした一連のあまりにもしんどい作業を通じて完成した成果が本論文集である。
 最後になるが、学生の皆さんにメッセージを記したいと思います。皆さんが一年間考えあぐねたことは、〈老い〉の問題のみに還元されるものではなく、最終的には〈私〉と〈社会〉をいかに順接/逆接するかという問題に帰着しましたが、皆さんは苦しみながら問うことのしんどさに耐えて考え続けることのできる人たちでした。その意味で、掛け値なしに「少数精鋭」と呼び得る方々でしたし、この「出会い」は私にとって今後も決して忘れることのできないものになるでしょう。今後のご活躍を心からお祈りしています。

●2005年3月
●天田城介

目次
刊行にあたって

第一章 高齢者の医療事情についてアメリカと日本の比較  (小泉あゆみ)
 はじめに
 関心の所在
 研究の目的
 第一節 アメリカ医療制度の現状と課題
  (1)アメリカの歴史と文化
  (2)アメリカの高齢化率
  (3)アメリカの医療制度の現状
   ・診療報酬のしくみ
   ・マネジドケア(HMO)
(4)アメリカの医療保障
   ・メディケア
   ・メディケイド
   ・民間保険
   ・メディケア、メディケイド、民間保険、無保険者の割合
 第二節 日本医療の現状と課題
  (1)日本の歴史と文化
  (2)日本の高齢化率
  (3)日本の医療制度の現状
   ・診療報酬のしくみ
  (4)日本の医療保障
   ・ 国民健康保険
 第三節 まとめ

第二章 老年期のセクシュアリティの日米比較分析  (古川法聖)
 関心の所在
 研究の目的
 はじめに
  (1) セクシュアリティという考え方
  (2) 日本とアメリカにおける老年期のセクシュアリティに関する先行研究 
 第一節 老年期の性・セクシュアリティの比較分析
  (1) 日本とアメリカにおける性道徳の変遷
  (2) 日本とアメリカにおける性意識・性行動
 第二節 肉体の老いと老化
  (1) 加齢による男性の性機能の変化
  (2) 加齢による女性の性機能の変化
 第三節 夫婦間における性・セクシュアリティ
 第四節 老年期の結婚についての比較分析
 第五節 施設入居者の性・セクシュアリティ
 第六節 まとめ

第三章 オーストラリアの高齢者福祉と日本の高齢者福祉の比較分析 (元村健太)
 はじめに
 関心の所在
 研究の目的
 研究の主題とアプローチ
 研究方法
 第1節 オーストラリアの歴史的背景と高齢化
  (1) オーストラリアの歴史について
  (2) オーストラリアの高齢化率に対する歴史的変容
 第2節 オーストラリアの高齢者福祉制度
  (1) オーストラリアにおける高齢者ケア
  (2) ACAT’Sについて
  (3) HACCについて
 第3節 日本の高齢化率
  (1) 歴史の中での高齢化率の移り変わり
  (2) 「老い」の捉え方
 第4節 日本の高齢者福祉制度の特徴と背景
  (1) 老人福祉制度における高齢者の位置づけ
  (2) 介護保険制度における高齢者の位置づけ
 第5節 日本とオーストラリアの高齢者福祉の相違点
 第6節 まとめ

第四章 高齢者福祉における日豪の比較分析―多様性の中での差異化を目指した高齢者ケア  (上田梨世)

 序章   関心の所在と本論文の構成
 第一節 オーストラリアの歴史と現状
  (1)オーストラリアの歴史、文化、社会
  (2)オーストラリアとニュージーランドの高齢者福祉の発展と経緯
  (3)オーストラリアの高齢者福祉の発展と経緯
  (4)オーストラリア・日本の高齢化率
 第二節 オーストラリアと日本での高齢者を取り巻くサービス
  (1)オーストラリアと日本における社会保障
  (2)両国の地域が主体となって行っているサービス
  (3)QOLの向上のための専門職の実践
  (4)多様化に適したサービスとは
 第三節 在日コリアン高齢者ケア
  (1)在日コリアン高齢者のライフヒストリー
  (2)在日コリアン高齢者のおける社会保障と地域サービス
  (3)在日コリアン高齢者におけるアイデンティティ
  (4)在日コリアン高齢者ケアの実践
 第四節 アボリジニ高齢者ケア
  (1)アボリジニ文化と歴史
  (2)アボリジニ高齢者における社会保障と地域サービス
  (3)アボリジニ高齢者のアイデンティティ
  (4)アボリジニ高齢者ケアの実践
 第五節 両国における、さまざまなエスニシティ高齢者ケア
  (1)文化的側面をふまえて、日豪の相違と類似  
  (2)エスニシティQOL支援
  (3)差異化を目指した高齢者ケア
 第六節 まとめと今後の課題
 おわりに

【年間スケジュール】
第01回(04月21日) 自己紹介、講義概要の説明、今年度の予定、ML作成
第02回(04月28日) 文献紹介、天田による国際比較分析の視点についての講義
●休日(05月05日) (GW中に各自で関心のある研究テーマを構想)
第03回(05月12日) 各自の関心のテーマを発表
第04回(05月19日) 『患者追放』第1章のクリティーク(古川さん)
第05回(05月26日) 生命倫理学関連/医療制度改革関連の文献参照
第06回(06月02日) 『患者追放』第2章のクリティーク(塚本さん)
第07回(06月09日) 『患者追放』第3章のクリティーク(上田さん)
第08回(06月16日) 『患者追放』終章のクリティーク(成松さん)
第09回(06月23日) 全体的討議(生命の/と倫理の国際比較の視点について)
第10回(06月30日) 研究計画の発表(小泉さん/元村さん)
第11回(07月07日) 研究計画の発表(古川さん/塚本さん)
第12回(07月14日) 研究計画の発表(上田さん/成松さん)
◆見学(07月31日) 国立ハンセン病療養所菊池恵楓園を見学
◆調査(09月10日) サンリブ子飼橋店で高齢者の購買行動調査
◆参加(09月22日) 第5回「通所介護後拠点」によるまちづくり支援事業委員会(於:わくわくランド)
◆見学(09月23日) 小規模多機能サービス拠点の見学
◆調査(09月下旬) 地域の高齢者への参与観察調査
◆調査(10月中旬) 包括型地域調査(碩台・城東校区の高齢者の調査)
第13回(09月29日) ●休講
第14回(10月06日) ●休講
第15回(10月13日) 研究計画の発表[→その後、ゼミコンパ]
第16回(10月20日) 『なぜ老人を介護するのか』のクリティーク
第17回(10月27日) 『「老い」とアメリカ文化』のクリティーク
●休日(11月03日) 
第18回(11月10日) 研究計画の発表(小泉さん/元村さん)
第19回(11月17日) 研究計画の発表(古川さん/塚本さん)
第20回(11月24日) 研究計画の発表(上田さん/成松さん)
第21回(12月01日) 『アメリカ おきざりにされる高齢者福祉』のクリティーク
第22回(12月08日) 研究計画の発表(小泉さん/元村さん)
第23回(12月15日) 研究計画の発表(古川さん/塚本さん)
第24回(01月05日) 研究計画の発表(上田さん/成松さん)
第25回(01月12日) 卒業演習報告書の提出
◆締切(02月05日) 報告書原稿の最終締め切り
◆刊行(03月上旬) 報告書の完成・配布

【その他】
●2月には本卒業演習の卒業論文集を作成します。合宿やゼミ視察旅行等も検討したいと思います。

天田城介(josukeamada.com)講義関連