天田城介(josukeamada.com)講義関連
2003年度 卒業演習(一福)

天田城介(AMADA Josuke)
最終更新日:2004.12.23


【講義日時】
卒業演習  金曜日3時限  114A

【講義資料】
随時レジュメを配布しています。

【卒業演習参加メンバー】(名簿順)
江上亜季・湯浅公博・吉田敦子・今村花奈・落合志穂子・園田真希子・田代路治・田中寛晃・永原慎也・古和真由美・元木賢悟・江村香子・坂井詩織・永山憲吾・松岡里佳・井上貴裕・椎木祥子・田中さゆり・遠山茜・橋本亮・堀彩子・吉牟禮綾子・岩村美幸・山田裕一・松本智子

【卒業論文集】
あと僅かですが、残部があります。希望の方は天田までメールをください。

【概要】
 未曾有の高齢化を特性とする現代日本において老人福祉の領域を中心にして福祉制度や福祉政策は大きく変容しつつあり、こうした劇的な変容を遂げつつある老人福祉の現状の中で、現実にケアサービスを利用しつつ、病や障害を抱えて生きる高齢者はいかなる意識をもち、自らのアイデンティティを保持しているのか、あるいはその家族成員(特に介護する家族成員)は福祉サービスに対してどのような意識を抱えつつ、過酷な家族介護の状況おいて自分のアイデンティティを維持しているのかについて、家族規範、ジェンダー、セクシュアリティなどの視点から考察することを本演習の目的とする。
 特に本演習では介護する側/介護される側といった両者を明確に分けてしまうサービス・オリエンティッドな視点からではなく、介護する側も介護される側もともに自らの状況の中で関係を作り、保ち、変えていく存在であることを前提にした上で、そこでの老いゆく当事者である高齢者ならびに家族成員やケア従事者のアイデンティティまでも照準した分析を行う。
 換言すれば、本演習では、〈老いゆくこと〉を単に老い衰えてゆく当事者の身体に帰属・完結する個別的な現象として理解するのではなく、ケアワークを媒介にしてそれぞれの成員のアイデンティティを変容させる出来事として照射していきたい。
 以上を前提にした上で、本年度の卒業演習のテーマは、近年急増している「痴呆性高齢者グループホーム」「小規模多機能サービス拠点」に照準し、批判的に検討する予定である。

 本演習では、はじめにそれぞれの問題意識・研究関心を発表してもらい、それに基づいて複数のグループ分けを行う。次いで、研究のための資料・文献の収集と解析の方法について説明した上で、各グループごとに関連する文献を講読し、レジュメを作成して発表を行う。一定量の文献を読み終えた後、各グループで研究テーマを設定した上で、インテンシブなフィールドワークを実施してもらう予定である。最終的には、まとめた結果を報告し、全体で議論してもらう予定である。年度末にはこのフィールドワークの結果は(相当な分量の)ゼミ報告書としてを完成・報告してもらい、再度全体で議論してもらう予定である。
 私の卒業演習は、年数回の施設見学と体験学習に加えて、実際にテープレコーダー(ICレコーダー)を片手に相当に緻密でハードな調査を実施してもらいますので、参加する学生にはそれぞれに明確な問題意識・研究関心を持った上での主体的なコミットメントを要求します。

●成績評定の方法:出席、演習課題への取り組みと発表内容、レポートで評定を行う。
●テキスト:特定のテキストは使用せず、適宜プリントを配布する。
●参考文献:参考文献は講義中に随時紹介する。

2003年度卒業演習(天田ゼミ)卒業論文集


小規模多機能サービス拠点論の行方
――日本社会で老いを生きるという現実――


●2004年3月


●刊行にあたって
 本論文集は、2003年度熊本学園大学社会福祉学部第一部社会福祉学科4年次必修科目である「卒業演習」(天田城介担当)を履修した学生たちが実施した調査結果をまとめたものである。本年度の卒業演習は、2003年6月に、厚生労働省老健局長の委託を受け、いわゆる“ポスト・ゴールドプラン21”を見据えた中長期的な介護保険制度設計や高齢者介護のあり方について検討してきた「高齢者介護研究会」が『2015年の高齢者介護』を提出したことを受け、「痴呆性高齢者ケア」や「小規模多機能サービス拠点」と呼ばれる現実を対象に理論的かつ実証的に研究を行った。ただし、演習では、こうした一連の動向に対して、たんなる積極的・肯定的な捉え方ではなく、むしろ批判的な視点を持つことによって、老い衰えゆく当事者がどのように生き抜いているかを明らかにすることを試みている。
 したがって、実践的潮流や知的ファッドに流されることなく、現在の日本社会において老い衰えゆく当事者がいかにして生きることが可能かといった大きな問題意識に基づきながらも、冷静かつ理論的な視点で分析することを目指したものである。これは現実の社会福祉の実践や制度や政策を大胆かつ緻密な構想力で見つめ直すような、とても重要な作業である。本年度の私の卒業演習を履修した全ての学生の皆さんは、こうした知的作業をお互いに支えあい、励ましあいながら、そしてそこで築いた新しい関係性をエンジンとしながら、逞しく、懸命に、楽しみながら進めてくれた。こうした学生の皆さんと一緒に私も考えあぐね、支えあう関係を築けたことは、私にとっても貴重な財産となるであろう。
 前期(春学期)では、資料や先行諸研究のレビュー作業を通して、「小規模多機能サービス拠点論」に大きな影響を与えた宅老所やグループホームの歴史的系譜を全体で議論しながら検討した。また、宅老所やグループホームや小規模多機能ホームなどの見学を通して、各自のテーマを構想していき、関連するテーマごとにグループ分けをした。
 後期(秋学期)においては、それぞれのグループの「痴呆性高齢者に対するケアの実践と制度」「共生型モデルの本質的な可能性と制度化の問題」「高齢者福祉と地域のネットワークの位置づけ」「小規模多機能ホームの制度化」のテーマに基づき、実証研究を実施した。こうした一連の作業を通じて完成した成果が本論文集となる。
 ところで、インテンシブなフィールドワークを実施する中で、どの学生も最初は緊張し、先方にアポイントをとることにさえうまくいかず、あれこれに一喜一憂している印象があった。私のほうできちんとこうした手続きについて説明をしなければならないのだが、説明不足でご迷惑をおかけしたこともあったようである。調査にご協力いただいた方々には、この場を借りてお詫びを申し上げるとともに、本報告書への忌憚のないご意見・ご批判をいただければ幸いです。ご協力してくださった方には改めて心よりお礼を申し上げたい。
 なお、論文集の編集委員である湯浅公博さん、園田真希子さん、永原慎也さん、井上貴裕さんは労をいとわず大変な編集作業にあたってくれた。記して感謝したい。
 最後になるが、「熊本学園大学」という学び舎を離れる学生の皆さんにメッセージを記したいと思います。皆さんがどんな状況でも生き抜くことができますように、そして、今後とも皆さんと冷静と情熱のあいだの関係を築き続けられますよう心から願っています。

●2004年3月
●天田城介

目次
刊行にあたって

第一章 痴呆性高齢者に対するケアの在り方
(今村花奈・江上亜希・永原慎也・橋本亮・元木賢悟)

 はじめに
 第1節 社会における痴呆性高齢者
  (1)痴呆の概念
  (2)痴呆症状の4段階
  (3)痴呆ケアの歩み
 第2節 特別養護老人ホームの現状と課題
  (1)特別養護老人ホームA
  (2)特別養護老人ホームB
  (3)分析
 第3節 新型特別養護老人ホームへの期待
  (1)従来型の特別養護老人ホーム
  (2)新型特別養護老人ホームの概要
  (3)ユニットケア
  (4)新型特別養護老人ホームと従来型の比較
  (5)分析
 第4節 痴呆ケア新時代―バリデーション療法
 第5節 まとめ

第二章 共生型モデルの検討
(遠山茜・落合志穂子・湯浅公博・岩村美幸・田中さゆり・山田裕一・松本智子・松岡里佳)

 第1節 共生型とは
  (1)共生型の提唱と受け止められ方
  (2)「共生型」とは
 第2節 地域はなぜ必要か
  (1)どうして地域密着がよいのか
  (2)地域にひらかれるためには、どのような条件・方法があるか
 第3節 なぜ小規模が良いのか
  (1)はじめに
  (2)B社協の大規模処遇についての問題点
  (3)小規模処遇・建物の小規模化、人数の小規模化
  (4)小規模処遇の実現に向けて
 第4節 共生型ホームにおけるケア
  (1)はじめに
  (2)ホーム内での人間関係
  (3)当事者が主体的になるには、どうしたらよいのか
 第5節 可能性と限界
  (1)安全面への配慮
  (2)共生型ホームの課題
  (3)共生型は普遍的なものなのか

第三章 『地域のネットワークのあり方』―民生委員を通して
(江村香子・坂井詩織・椎木祥子・園田真希子・田中寛晃・堀彩子・吉牟礼綾子)

 第1節 関心の所在
 第2節 民生委員の歴史
 第3節 民生委員の概要
  (1)民生委員制度
  (2)民生委員の役割
  (3)地域福祉計画の策定と民生委員の役割
  (4)民生委員についての考察
 第4節 K町の実態
  (1)調査方法
  (2)K町の概要
  (3)K町の実態調査の結果
  (4)分析・考察
 第5節 まとめ

第四章 「小規模多機能ホームについて」―現在の制度との関わりとそこに生じる経営的な問題とは
(井上貴裕・田代路治・永山憲吾・古和真由美・吉田敦子)

 第1節 関心の所在
 第2節 研究の目的と意義
 第3節 調査方法
 第4節 調査結果
  (1)小規模多機能ホームAについて
  (2)小規模多機能ホームBについて
  (3)小規模多機能ホームCについて
  (4)熊本県庁の調査結果について
  (5)小規模多機能ケアの機能性について
 第5節 全体の考察

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