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| ■104■ 指定討論者(コメンテーター). 大会企画シンポジウム「高齢者の『生の質』を支える/捉える営み――棲家のあり方をめぐって」の指定討論者 日本質的心理学会第3回大会.2006年8月6日(日).09:00〜10:45.於:九州大学. |
天田城介(AMADA Josuke)
最終更新日:2006.08
【概要】
※以下、松本さんからのメールの転載+大会HPhttp://www.hes.kyushu-u.ac.jp/quality/からの引用
日本質的心理学会第3回準備委員会企画シンポジウム
「高齢者の『生の質』を支える/捉える営み:棲家のあり方をめぐって」
企画者 三浦 研 (大阪市立大学)
松本光太郎 (名古屋大学)
司会 小野寺涼子 (早稲田大学)
話題提供者 下村恵美子 (宅老所よりあい)
三浦 研 (大阪市立大学)
松本光太郎 (名古屋大学)
指定討論者 浜田寿美男 (奈良女子大学)
天田城介 (立命館大学)
【企画主旨】
※松本さんからのメールの転載
本シンポジウムは,高齢者の「生の質」を<支える>営みと<捉える>営みを,どこか並行させながら議論することを狙いとしている。「質」を標榜する本学会において目指されることは,何よりも事象の質を<捉える>ことであろう。しかし,事象の質を捉える営みには,不可避的に事象の内にある何ものかに触れる必要があり,かつ事象を形成している人たちと触れ合う過程が入り込む。これを手段と見るか,目的と見るかで大きな隔たりが起こるのではなかろうか。
本シンポジウムでは,高齢者の「生活の質」を<支える>営みそのものが,高齢者の「生活の質」を<捉える>営みに繋がっていくのではないかという立場に立っている。そして,本シンポジウムにおいては,高齢者の「生の質」を抱える「棲家(すみか)」を支えるという具体的な実践に関わり,実践を通して思索を重ねてきた方々にご登壇を願った。
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高齢者の「生の質」を問うとき,その当人が生活している環境・場所・住まいを抜きにして語ることは出来ない。特に,家族など身近な環境の支えだけでは生活が成り立たなくなった際,慣れ親しんだ自宅から自宅以外の場所へと移り住まなければならないことは,当人のみならず取り巻く人々にとって大きな課題となる。
自宅以外の高齢者の棲家の形態は,現在では多様な選択肢として提供されている。特別養護老人ホーム,ケアハウス,介護付マンション,グループホーム,病院,それから小規模多機能施設の原型である宅老所が挙げられる。
自宅だけで生活していくことを諸々の事情により断念せざるをえなくなった高齢者においても,なるべくそれまでの生活を継続させるよう支える営みを実践されてきたのが,話題提供者の下村さんが代表を勤める福岡市の「宅老所よりあい」である。お寺の茶室からスタートし,言わば自然発生的に,あるいは状況依存的にここを棲家とする認知症高齢者(下村さんは「ぼけの世界」と詩的に表現される)の「よりあい」の場と成ってきた。行きがかりで抱えざるを得なくなったその都度都度の試行錯誤の中から,この場所は周囲の町ともつながりながら,「普通の暮らし」ができ,「裸のつきあい」をして,そこに住んだ人の死をむかえる場として成長を遂げている。「宅老所」という棲家の形態は,ここから始まりその後全国にも展開していった。逸話として,詩人の谷川俊太郎さんが仮に認知症を抱えた際にはここへの入所を希望され,すでに快諾を得ていることが下村さんの著書「98歳の妊娠」等で紹介されている。下村さんには,「宅老所よりあい」という高齢者の「生の質」を支える環境がどのような経緯で形作られてきたのか,さらにどのように継続することを可能にしてきたのか,そして実践を継続させていく上でどのような課題を抱えておられるのか,「現場から考えること」をお話いただく。
つぎに,三浦さんは,グループホームの設計や運営に関わってこられ,建築を専門としている。施設設計の実践と各地の先進的施設における観察を通して,これまで高齢者が自宅で当たり前に行っていたことを出来るだけ配慮する施設設計を,実現可能なものとして担ってこられた。三浦さんは,「宅老所よりあい」の増改築を行う際に関わった経験がある。三浦さんには「宅老所よりあい」を含めて,高齢者が自宅以外の場所で生活する環境づくり・場所づくりを行う上で留意する/している点についてお話しいただきたい。また三浦さんは,阪神淡路大震災後の高齢者のグループホームづくりや,長崎・雲仙の噴火によって家を失った人達の場所喪失の研究もされており,危機的な状況で環境が人をどのように支えるのか,具体的な方法論を含めて話題提供していただく。
最後に松本は,在宅の高齢者のみならず,施設(特別養護老人ホーム)で生活する高齢者の生活の近くで,長期にわたって付き合いながら自身経験してきたことを記述するという営みを行っている。特に,高齢者の生活にとって「外へ出る」ことの持つ意味を,行為や体験を描き出すことから探索してきた。施設に入居している高齢者が日々当たり前に営んでいる行為や体験の記述を行ってきたが,時間の経過とともに松本自身が高齢者において当たり前に営んでいる行為や体験を支える役割を担うようになり,そのかかわりの実践そのものを記述するように変遷してきた。それらの活動を通して,高齢者の「生の質」を支える営みとは,彼/彼女らに日々当たり前に訪れる/訪れていたこと・ものの継続を支える営みであり,高齢者の「生の質」に迫る際には,その側面を捉える営みが不可欠ではないかという趣旨の話題提供を行いたい。そのような観点から,現在の施設という住まい方について,また「宅老所よりあい」の実践についても私見を述べたい。
指定討論は,浜田寿美男さんと天田城介さんにお引き受けいただいた。
浜田さんは,心理学分野に留まらない活動をされているが,例えば著書「子どもの生活世界のはじまり」の中で重度重複障害の子ども達の療育の現場において,「発達する」事の意味を根本的に問い直し,子どもが「周囲の人や物や場や時ととりむすぶ関係の系の全体」を視野に入れた生活世界の地平を問うていく姿勢を示された。また,冤罪事件における虚偽自白の事例をたんねんに読み解いた「自白の研究」において,「人は個として生きるのではなく,共同的に生きるものだ」という生活世界の共同性の事実を臨界的な状況の中から提議している。
天田さんは,社会学分野において活躍をされている。著書「<老い衰えゆくこと>の社会学」においては,従来の社会老年学でとられてきた高齢者を「対象」とする生物学的・医療的・社会福祉的視点からこぼれ落ちる,当人において「<老い衰えゆくこと>の意味」に焦点を当て,特にケアサービスをめぐる場をフィールドとして研究を行っている。また,天田さんも「宅老所よりあい」とは少なからず関係があるとお聞きしている。
お2人には,3人の話題提供を受けて,取り巻く環境(棲家)の内部において生成する高齢者の「生の質」を支える/捉えることの大切さと,一方で不可避な困難についてお話いただきたいと希望している。
参考文献
下村恵美子 『九八歳の妊娠』 雲母書房
浜田寿美男・山口俊郎 『子どもの生活世界のはじまり』 ミネルヴァ書房
浜田寿美男 『自白の研究:取調べる者と取調べられる者の心的構図』 北大路書房
天田城介 『〈老い衰えゆくこと〉の社会学』 多賀出版
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