天田城介(josukeamada.com)著書・論文など
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「第3回日本社会学会奨励賞【著書の部】受賞者「自著を語る」
/受賞作:天田城介,2003,『〈老い衰えゆくこと〉の社会学』多賀出版」.

日本社会学会発行.『社会学評論』221号(Vol.56, No.1).P214〜P215.2005年06月.

天田城介(AMADA Josuke)
脱稿:2005.02 最終更新日:2006.04


【全文】(以下、草稿です)

第3回日本社会学会奨励賞【著書の部】受賞者「自著を語る」
受賞作:天田城介,2003,『〈老い衰えゆくこと〉の社会学』多賀出版.

 ●天田城介(熊本学園大学社会福祉学部助教授)

 本書は、序章にて記したように、〈老い衰えゆくこと〉をめぐる語りを政治的な場として発見することこそ最大のねらいとして遂行した研究である(P4)。その意味で〈老い衰えゆくこと〉をめぐる語り/言説を媒介にした成員間の諸々の相互行為を通じて常に既に行為遂行的(パフォーマティヴ)に作り出されている〈老い衰えゆくこと〉をめぐるアイデンティティの政治(ポリティックス)を「自己論」の地平から解読すること、これこそが本書が実行したささやかな企て(プロジェクト)であった。
 本書は〈老い衰えゆくこと〉をめぐるアイデンティティの政治を「再帰性reflexivity」を基軸概念として析出しようと挑戦した研究であるのだが、以下では、本書で明示的/暗示的に言及した研究の理論的射程に関して、下記の3点に絞って論及したい。なお、これらは本研究では論理的に精緻化することが困難であった今後の課題でもある。
 第一に、本書では〈老い衰えゆくこと〉という現実に照準しつつも、可能な限り時代の現実性(アクテュアリティ)との緊張関係を保持しつつ当の現実を照射したいという思いがあった。言い換えれば、設定/区画した守備範囲と射程圏域を超えて、現代社会における自己の再帰性をめぐる事態を、つまりは〈自己〉と〈社会〉の接続の方法をいかに考究することが可能かという理論的な領野を常に念頭に置いたつもりである。極めて乱暴にその要諦のみを言及すれば、現代的自己とは「絶えざる・寄る辺なき再帰性による物語」に駆動される中で自己準拠的に産出される自己(P.52)となるがゆえに、徹底化された再帰性によって、参照前提を消失しつつ自らを無限に再帰=反省する自己を駆動させるか、そうした前提さえも懐疑し尽くした結果、アイロニカルな自己はその極大化した「寄る辺なさ」に耐え切れず「確かなもの」へと没入=帰依していくことになる(P53)。
 以上の事態に雁行して、「高齢社会」における〈老い〉は「再帰的エイジング」とでも呼ぶべき過程にならざるを得ない(P86)ことを析出し、ミード=ギデンズ的な意味での「再帰的自己」を生きることが困難である「痴呆性老人」と呼ばれる人々との〈あいだ〉にこそ、換言すれば「再帰的自己」に根源的に挫折するがゆえに切り拓かれる徹底的に受苦的/受動的存在としての人間どうしの邂逅という地平から理論的価値を探求しようと試みた。
 第二に、「施設介護」「在宅家族介護」「高齢夫婦介護」という3つの〈場〉におけるフィールドワークによる実証的分析を詳述することを通じて、「公的領域/私的領域」という強固な境界設定によって、人々は諸々の相互行為を通じて行為遂行的(パフォーマティヴ)に「市民社会」なる現実を常に既に作り出し続けていることを、つまりは、公的領域と私的領域は共犯的に「市民社会」としての社会秩序を達成していく機制を剔出した(P455)。そして、件の強固な境界設定によってそれぞれの〈場〉における〈老い衰えゆくこと〉をめぐる当事者のアイデンティティがせめぎあう只中で、成員相互の「暴力の転化」という事態を召還することになる(P464)。こうしたアイデンティティのせめぎあいを突破するためにこそ、「市民社会」を構成する「私的領域/公的領域」という境界設定を再編する戦略について言及した。
 第三には、「構築主義の困難と可能性」を自己と他者の〈偶有性〉を基軸とした「応答可能性」という認識論的台座から解読すると同時に、〈老い衰えゆくこと〉の語り難さ・語り得なさ、〈老い衰えゆくこと〉の根源的暴力性を基底とした、他者の「呼びかけ」によって惹起する自己の〈他者性〉を起爆剤とした「脱−形象化」とアイデンティティの脱臼=転位を通じた「応答可能性」の価値について主張したものである。これは差異/差別をめぐる問いであると同時に、超越論的視線の転轍/変転の(不)可能性をめぐる問題でもある。
 その他言及すべき点は多々あるが、上記の3点から問うべき論点=争点は《事実/価値の範式を超えて〈社会的なもの〉をいかにして定位させることが可能か?》というものである。この点については拙著では積極的に言及し得なかったため、今後の「宿題」とさせていただきたい。
 本書は、立教大学大学院に提出した博士学位論文に加筆と修正を施したものである。博士後期課程3年間で脱稿した論文を原型とする本書は、今から読み直せば全く不完全で綻びだらけの論文であるが、積み残した多くの課題は今後取り組んでいくことにしたい。
 本書を完成することができたのは、指導教授の木下康仁先生(立教大学)をはじめ、庄司洋子先生(立教大学)ほかこれまでご指導をいただいた多くの方々のご教示によるものである。この場を借りて心からお礼申し上げたい。また、解明すべき論点が山積した状態にある拙著に目をとめてくださった学会奨励賞選考委員、推薦委員の諸先生に深く感謝申し上げたい。

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