天田城介(josukeamada.com)著書・論文など
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用語集執筆
「アイデンティティ」「意図せざる結果」「エスノメソドロジー」「ギデンズ」「ステレオタイプ」
「中範囲の理論」「ドラマトゥルギー」「ハビトゥス」「ブルデュー」の9項目.

古川孝順・白澤政和・川村佐和子編.『社会福祉士・介護福祉士のための用語集』 誠信書房.2001年5月30日.

古川孝順・白澤政和・川村佐和子編『社会福祉士・介護福祉士のための用語集』画像
天田城介(AMADA Josuke)
脱稿:2000.11 最終更新日:2004.04

※本ホームページの原稿は校正作業を行う前のものです。(2000年11月執筆)


■アイデンティティ
 パーソナリティの核心、一貫性、連続性、本来性に関連する概念で、訳語として自我同一性、自己同一性、主体性、存在証明、自己確認などが充てられる。エリクソン(Erikson, E.H.)は、それまで主に哲学で使用されてきたこの概念を転用して精神分析の用語に書き換えて、社会や文化のあり様と密接に連関しながら自我によるパーソナリティの統合が行われていることを指摘した。エリクソンの理論以降、この概念は心理学、社会学、政治学、文化人類学など広範な学問領域へと普及した。

■意図せざる結果
 ある意図をもってなされた行為それ自体が、その意図の達成を阻んだり、その意図とは相反する結果をもたらしてしまうという皮肉な社会現象。社会学者マートン(Merton, R.K.)が提示。これをマートンは、「あの銀行は倒産しそうだ」という噂(=予言)が広まることで実際に多くの人が預金を引き落としに殺到し、結果的に銀行が倒産してしまうといった「自己成就的予言」と、小麦の生産過剰の予測(=予言)が流れることで、値崩れを恐れた生産者たちが生産量を抑制した帰結として、予言とは反対の結果を招いてしまうような「自己破壊的予言」の2つに区分した。

■エスノメソドロジー
 1960年前後から米国で発展した社会学のパラダイムの一つで、創始者ガーフィンケル(Garfinkel, H.)によって命名された。エスノメソドロジーとは日常における〈人々の方法〉の研究であり、特に人々が「常識」「当たり前」「正常」などととみなし、自明なものとして遂行している日常的活動を照射し、その中で、いかにして人々は協働して納得のいくような形で説明を行い、解釈することが可能となっているのか、また、そこでの発話や行為の積み重ねを通していかなる〈現実〉が作り出されているのかを解読する学問的立場である。

■ギデンズ
Giddens, Anthony(1938− )
現代イギリスの代表的社会学者の一人。ケンブリッジ大学教授を経て、97年にロンドン・スクール・オブ・エコノミックス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)のディレクターに就任。これまで一般理論、階級論、国家論、社会変動論、世界社会論、モダニティ論など広範な領域で精力的に研究を展開。「パワー」概念を基軸に構造化理論を打ち立てつつ、それまでの唯物史観へのラディカルな批判を展開したり、「再帰性(reflexivity)」概念を切り口に近代という時代のあり方を鋭く分析している。

■ステレオタイプ
 元来は活版印刷工程において鋳型から製造される鉛版(ステロ版)を指していたが、同型刻印され量産的に鋳造される意から派生して、単純化され固定化された紋切り型の行動・態度・イメージ・思考・観念をも意味するようになった。最近では、定型的な思考や態度、画一的なイメージや偏見を表す言葉として日常的にも使用される。我々は既成の価値や規範に準拠して現実の意味を確定しようとして、ありきたり思考に頼り、偏狭で歪曲化された偏見を醸成してしまうことがある。

■中範囲の理論
 社会学者マートン(Merton R.K.)によって提唱された、理論と実証を体系化・統合化するための指針や志向性。マートンは、経験的調査で展開されている作業仮説と全てを包括するような一般理論との中間水準に位置する「中範囲理論」こそ重要な研究であると主張し、個別領域での経験的調査によって発見された事実を抽象化しつつ整合的に導出した命題群の理論的統合を目指した。彼自身の中範囲理論の試みには準拠集団論、逸脱行動論、官僚制研究、マス・コミュニケーション研究などがある。

■ドラマトゥルギー
 ドラマトゥルギーとは、元々は戯曲を中心とした演劇論や演出方法、劇作術、その方法論を総称する用語であったが、特に1950年代以降、社会学・人類学・政治学の領域でこのドラマトゥルギーの視点から人々のコミュニケーションに照準しようとする「演劇論的アプローチ」が登場し、その意味内容は変移した。ゴッフマン(Goffman, E.)は対面的な相互行為の状況をパフォーマー/オーディエンス、舞台、印象操作などの概念を駆使し、人々のパフォーマンスやその演出技法を巧みに読み解いた。

■ハビトゥス
 ブルデュー(Bourdieu, P.)の社会学理論の主要概念の一つであり、経験の積み重ねによって個人に定着した知覚・思考・行動様式を持続的に生み出させる性向を規定する諸要因の集合を指す。例えば、一見個人の自由な選択と思われている趣味や衣食の選好などの実践(pratique)は、現実にはその個人の所属する階級や階層の中での社会化(学習や習得)によってもたらされた性向に規定される。このように個人の実践が階級という社会構造に条件付けられていると同時に、こうした実践を通して社会構造を再生産してゆく原理であることが含意されている。

■ブルデュー
Bourdieu, Pierre(1930− )
 現代フランスの代表的社会学者の一人。コレージュ・ド・フランス教授。様々な調査や統計的資料を効果的に用いて、人々が日常生活において意識的あるいは無意識的に営為する実践(pratique)を分析し、そこから一見それとは結びつかないような社会構造を照らし出す。こうした経験的現実への対照によって、現代社会における実践と構造の相互規定的ダイナミズムを析出する。構造、実践、ハビトゥス、文化資本、文化的再生産などの主要概念を基軸に、階級や階層、教育をめぐる社会現象を鮮やかに解明している。

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