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| ■012■ 福祉見てある記(30) 「医療制度改革の残したもの――「重症高齢者」への地域福祉実践は可能か」 熊本学園大学付属社会福祉研究所発行.福祉情報誌「くまもと わたしたちの福祉」第45号:**-**.2004年9月**日. |
天田城介(AMADA Josuke)
脱稿:2004.07 最終更新日:2004.10
【原稿】
※当時、社会福祉研究所の福祉情報誌担当のため原稿を幾度か執筆。
医療制度改革の残したもの――「重症高齢者」への地域福祉実践は可能か
●天田城介
1990年代の介護保険制度の創設に雁行する形で行われた医療制度改革によって、政府による医療費、とりわけ高齢者医療費の抑制政策が然したる議論も抵抗もなく進められてきた。こうした高齢者医療制度改革は、1997年から始まった医療保険制度を中心とする医療制度「抜本改革」議論によって巧妙に不可視化・隠蔽されている。今や高齢となり医療が必要不可欠になっても、十分な医療を受けられることは極めて難しい状況にある。こうした医療制度改革によって、いわゆる「重症高齢者」を受け入れる医療施設や社会福祉施設を探し出すことは大変な苦労を要することとなり、「重症高齢者」は十分な医療サービスもケアサービスも保障されないまま在宅での生活を余儀なくされているのが現実である。そして、私たちはこうした現実が作り出されていることをあまりにも知らないでいる――だとすると、「介護保険制度」なるものは、いったい私たちに何をもたらしたのであろうか。
ここで詳細に検討する紙幅の余裕がないため、ごく簡潔に言及すると、1990年代に進められた病院機能分化を始めとする医療制度改革によって、そして介護保険が施行された2000年4月の診療報酬改正での「包括払い方式」やその後の2000年10月のいわゆる「90日ルール」や2002年4月の「180日ルール」によって、「重症高齢者」は医療施設からも社会福祉施設からの入院や入所を拒否され、結局のところ、在宅生活を余儀なくされるようになった。この「医療制度改革」の経緯をひどく乱暴に説明すれば、在院期間短縮化政策として、2000年4月の「包括払い方式」によって病院には高齢者の入院期間が180日(6ヶ月)を超えると治療の内容にかかわらず定額しか支払われなくなり、2000年10月の「90日ルール」によってその入院期間は180日から90日に短縮されることになり――ただし、90日で一旦は退院して再入院をすることで入院期間を再カウントするという制度の抜け道もあった――、2002年4月の「180日ルール」によって同じ病名で180日を超えて入院する患者に入院基本料の一部を自己負担させる仕組みが作られた――ただし、同じ病名で180日を超える入院の自己負担が増える仕組みであるため、別の病名で再入院させることで「重症高齢者」はあちこちの場所を「たらい回し」「病院漂流」となることも少なくない――、ということになる。そして何よりも、こうした一連の医療制度改革の「始末の悪さ」は「社会的入院の解消」「過剰医療の解消」「ターミナル・ケアの充実」などといった口当たりの良い言葉によって老人医療費の抑制政策が覆い隠されていることである。
いずれにしても、「介護の社会化」が謳われた介護保険制度以降の今日においても、なお老い衰えゆく身体を生きる高齢者が日々つつがなく自らの生活を営むことは難しいのだ。
こうした状況において医療・看護・保健・福祉を接続/統合化し、多角的な観点から地域との連携を志向するセンターの果たす意義は説明するまでもないだろう。医療法人社団寿量会熊本機能病院に併設されている地域ケア支援センターもこうした現状認識に立って設立されたと言えるであろう。地域ケア支援センターは、機能病院や老人保健施設清雅苑のソーシャルワーカー、訪問看護ステーション清雅苑やホームヘルパーステーション清雅苑や居宅支援事業所、機能病院在宅サービスセンターのスタッフが、そして熊本市在宅介護支援センター清雅苑のスタッフが相互に連絡調整を図りながら連携している(医療ソーシャルワーカー5名、在宅介護支援センター職員1名、老人保健施設2名、居宅介護支援センター1名など11名のスタッフによって構成)。
先の医療制度改革の波は当然ながら当該施設機関にも押し寄せたのであるが、寿量会では「急性期⇒回復期⇒老人保健施設⇒在宅生活」という一連のプロセスの中で相互に調整を図ることで、「制度の谷間」の解消を目指す方向が目指されている。むろん、寿量会でもいわゆる「高医療ニード」の高齢者に対して十分な医療と介護が提供可能となっているわけではなく――現在の制度設計の観点からすればその実現は不可能に近い――、それぞれの職員が苦悩しつつ、逡巡しながらそれぞれの持ち分の仕事にあたっている。
別の観点からすれば、地域ケア支援センターのスタッフが逡巡しながらも「重症高齢者」の医療保障に対して取り組むという制度設計上困難な行為を遂行することが可能となっている条件とは、当該施設機関が複数の施設と機関を配備した総合施設機関であるということに他ならない(皮肉な事態だ!)。換言すれば、経営基盤が脆弱で単機能しか持たない施設・機関のスタッフにとってはこうした取り組みさえも許されざるを得ないような状況に置かれているということなのだ。
地域ケア支援センターへの訪問を通じて、改めて高齢者医療制度と高齢者保健福祉制度を総合的かつ統合的に設計することの意味を痛感した。特に、「不気味に」と形容すべき「医療制度改革」の展開の出来した現実を目の当たりにする度にこの思いは強くなる。
医療法人社団寿量会 熊本機能病院
URL:http://www.juryo.or.jp/
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