天田城介(josukeamada.com)著書・論文など
■001■
文献紹介.「安立清史.1998.『市民福祉の社会学――高齢化・福祉改革・NPO』ハーベスト社」
立教大学社会福祉研究所発行.『立教大学社会福祉ニュース21号』.2000年3月31日.

天田城介(AMADA Josuke)
脱稿:2000.01 最終更新日:2004.06

『立教大学社会福祉ニュース21号』(立教大学社会福祉研究所HP)
PDFファイル】(立教大学社会福祉研究所HPよりダウンロードできます)


【文献紹介】(草稿)

安立清史.1998.『市民福祉の社会学――高齢化・福祉改革・NPO』.ハーベスト社.

 本書は、これまでの社会福祉や地域福祉の課題を整序しつつ、そこから浮上した筆者の問題関心に則して実証研究を展開した「市民福祉の社会学」の良書である。
 以下、3部から構成される本書の要旨をごく簡潔に整理すると、第1部「福祉改革の社会学理論」では、米国における社会の高齢化への対応やジェロントロジーの展開を概括することを通じて、対比的に日本社会におけるそれらの問題が指摘される。
 続く第2部「社会福祉への市民参加」においては、戦後の日本社会がいかにして社会事業や社会福祉を受容し、そして変容させていったのかという、言うなれば〈福祉〉を換骨奪胎してゆく「社会福祉の日本化過程」を歴史社会学的に論考し、その過程において剔抉された問題の現在性を問い直す。更に、そうした「日本化過程」を図の背景としながら、わが国においてなぜ故に社会福祉への市民参加の実現が困難であったのかを政治学・社会学・福祉学の理論を領域横断的に概観した後に、介護保険法やNPO法によって新たなる市民参加の福祉が結実してゆく可能性が描出される。
 第3部「地域福祉・ボランティア・NPO」は、地域福祉の広範な調査に基づいた実証研究を集めている。ここではまず、現在の住民参加型在宅福祉サービス活動が、その主たる担い手である人々――その多くは40代から60代の女性――による社会の高齢化や自らの老後への不安を端緒とした社会福祉への関心の高まりの社会的帰結として発展してきた構図が鮮やかに描写される。次いで、このように社会福祉への関心や活動が著しく女性に偏向している現実を作り上げている機制をジェンダーの視点から析出し、その問題性が考究される。最後に、日米のボランティアを比較分析し、「高齢化」を基軸点として日本におけるボランティアの課題を再考した後、筆者自身の手により日米で実施された緻密な調査を参照しながら両国のボランティア活動からNGOへの展開を総括する。
 「はじめに」で述べられているように、本書は、社会福祉をめぐる歴史社会学的あるいは比較社会学的な検討作業を通じて、「社会変動へ対応しようとする積極的な力を福祉学や社会学の理論や現実社会の動きの中に発見してゆくこと」を目的としている。その限りにおいては本書の目的は充分に完遂されていると言えよう。そこに著者の福祉への深い造詣を察することもできる。ただ贅沢を言えば、そうした社会変動へ対応せんと挑戦してきた理論や実践が立ち現れてきた歴史的な文脈やそのダイナミズム、更にはなぜそうした理論や実践がまさに現在「発見」されるようになったのかといった社会的機制については十分に論及されていない点は残念である。しかし、むしろこうした探求は本書によって我々読者に開示された課題として受けとめるべきものであろう。

天田城介(josukeamada.com)著書・論文など